ココロに効く心理学のメニュー

様々な悩みに対する対処法について考えていきます!

自分だけが場になじんでいないという気がする人へ

今日は、いつも自分だけが場になじんでいないという気がする人、または下記に思い当たることがある人に対して、気づいて欲しい事を書きます。

  • つい「自分なんて」と思ってしまう人
  • どうしてxxさんのようになれないのだろう、と落ち込んでしまう人
  • 自分は誰からも好かれないだろう、と思ってしまう人
  • 一生懸命やってもいつも何か足りない、と感じてしまう人
  • 自分をいたわれない人
  • 誰も自分を大切にしてくれない、と不満を抱えている人
  • 他人に「ノー」が言えない人

・・・・これらの人たちは、ある共通した問題を抱えています。

 

以上は、精神科医 水島広子著 「自己肯定感、持っていますか?」の『はじめに』の冒頭からの一節です。そして、この共通した問題というのが、「自己肯定感」なのです。

 

この著者の水島広子先生は対人関係療法という精神療法の日本での第一人者であり、人間関係を癒し、心の平和を唯一の目的とする国際的ボランティア・グループのアティテューディナル・ヒーリングの日本での組織AHJの代表も務められています。

 

水島先生は長年の対人関係療法の経験から、上記のような人の中には「いつも他人を優先させてしまう」というタイプの人が少なくなく、これらの人には自己肯定感(=自分を大切にする気持ち)が低いという共通の問題があると分析しています。この自己肯定感を高めることで精神疾患を癒していけるのだというのです。

 

自己肯定感とは「優れた自分」を誇りに思うことではありません。「ありのままの自分」をこれでよいと思える気持ちなのです。自己肯定感が高ければ失敗しても「もうダメだ」と絶望的にならずに、「まあ、なんとかやってみよう」「なんとかなるだろう」「今回は仕方ない。次はうまくやろう」と前向きな捉え方をすることが出来るのです。

 

自己肯定感が低い人の例として次の6つの例が説明されています。

  1. 私なんて、と思ってしまう
  2. 頑張りすぎてしまう
  3. 他人に振り回されてしまう
  4. 親しくなれない
  5. 嫌われてしまう
  6. 他人の言動に腹が立つ

最後の他人の言動に腹が立って、つい他人を攻撃してしまう人については、人間も含め動物は脅威を感じると「Fight or Flight (闘争か逃避か)」 反応を引き起こし、逃げられれば逃げようとするが逃げられないとなると闘うという習性があり、攻撃はこの後者であると説明されています。自分の言動を否定ばかりされて育った人は多様な意見を受け入れにくく、自分と違う意見や考え方に基づく行動に対し脅威を感じてしまうのです。

 

では、どうすればこの自己肯定感を高めることができるのでしょう?

 

水島先生は、自分の自己肯定感を高めるためには他人をリスペクトすることだと伝えています。ただ、ここでのリスペクトの意味が大切です。ここでのリスペクトは「敬意」という意味ですが、「優れた人だから」とか「尊敬できる業績をあげたから」リスペクトするのでは逆効果なのです。これらは「条件付きのリスペクト」であり、それは社会的評価に自分が同意することを含む、自分で下した評価に基づいてしまっているからです。これはそんな優れていない、業績を上げていない自分に対する卑下につながってしまう思考です。

 

なので自己肯定感を高めるために本当に必要なのは、他人に対する無条件なリスペクトなのです。無条件なとは、相手のありのままを受け入れた上でのリスペクトです。「様々な事情がありながら、一生懸命生きている存在」へのリスペクトなのです。何もせず怠け者のように見える人でも、他害的な言動ばかりする人に対しても、何かそうなってしまってきている人生の事情があり、その人なりに頑張っているんだろうなと、リスペクトするのです。

 

そうやって無条件のリスペクトをするようになると、「とにかく嫌な人」「信じられない人」等、自分が今までストレスを感じてきた相手に対しても「あんな異常な行動をとるようになったのは、よほど深い事情があるのだろうな」と思えるようになり、そこから受けるストレスも随分違ってくるのです。

 

他人をリスペクトすることがもっと分かりやすくなるための5つの原則が紹介されていますので項目だけ紹介します。詳細は書籍にてご確認下さい。

  1. お互いの「領域」を守る
  2. 「なるほど」の瞬間を積み重ねる
  3. 人を変えようとするのはやめる
  4. リスペクトを示す話し方をする
  5. 自分が下した「評価」にとらわれない

そして他人をリスペクト出来たように今度は自分をリスペクトするのです。そうすることで自分に優しく温かい感覚を与えてあげることになります。とても大切なポイントですが、自己肯定感を高めるとは、決して自分の良いところ探し=条件探しではないのです。自分自身のことも「いろいろと事情がある中で、頑張っている存在」として見てあげることで元気になっていけるのです。

 

対人関係療法では、本当の自分を見せて人とつながることで、「ありのままの自分」を他人から受け止められた体験が病を癒していきます。この体験を水島氏が代表を務めるボランティア団体が実施しているアティテューディナル・ヒーリング ワークショップでは体験できるようです。

 

このワークショップの内容については、近いうちに私自ら体験して来て内容を報告したいと思います。

 

それでは、今回紹介した水島広子先生の著作を下記に紹介いたします。