ココロに効く心理学のメニュー

様々な悩みに対する対処法について考えていきます!

すぐ怒ってしまう自分を変えたい人へ

「勇気づけ」で有名なアドラー心理学

日本では、「嫌われる勇気」岸見一郎 著、古賀 史健 古賀史健 のヒットでブームとなったアルフレッド・アドラーが、フロイトとの決別後に表したしてアドラー心理学(本人はIndividual Psychologieと呼んでいたが、日本語に訳して個人心理学と呼ぶとニュアンスが異なってしまうので、日本ではアドラー心理学と呼ばれています。)は、特に様々な悩みから「自分を変えたい!」と思っている人に勇気を与えてくれる心理学です。アドラー心理学はとても広い内容の理論や方法論の集合体なので、とても一度にご紹介しきれませんが、今回は特に「自分を変えたい」と考える人にとって有効だと私が考える視点を中心にご紹介したいと思います。

アドラーの生い立ち

フロイトとのアドラーは1870年ウィーン近郊でユダヤ人家庭の第2子として誕生。幼少期は病気がちでくる病に罹り、成人しても154cmと小柄でした。小学校の時に落第も経験しています。幼い頃、弟を亡くした経験から早くから市の問題に関心を持ち、医師になる決心をしました。父親などの勇気づけを受け体の障害と劣等感を克服し、ウィーン大学医学部に進学しました。内科医を経て精神科医になりフロイトと出会い、フロイトの主宰する「水曜会」に最初から参加し、後に会長に就任しましたが、その翌年、フロイトと決別します。

フロイトとの対立点

フロイト精神分析は、心の病気の原因を探りそれを取り除く「原因論」で、人間の心を意識・前意識・無意識の3層に分け、その対立や葛藤を理解するという局所モデルでした。特に幼少期の影響やトラウマ、エディプス・コンプレックス等、仕舞い込まれた過去の経験を分析する事が主流でした。

アドラーは、人間を精神と肉体、感情と理性、意識と無意識というふうに分けて考える「二元論」に反対しました。例えば、「心の中でも2つの部分があり、一方の自分は冷静だが、もう一つの自分は怒りに駆られて大声を出した」というふうには考えません。あくまで全体としての私がある行為を選ぶのであって、その選択には責任があるという考え方をします。また、過去の原因の分析(原因論)では未来は変えられないと考え、「目的論」を唱えました。現在の性格は経験そのものではなく、経験に与える意味によって、自分自身で決定しているのだというのです。目的論の例としては、「怒りに駆られて大声を出したのではなく、大声を出すために怒った」のだと考えます。xxxが不安だから(原因)学校に行けないのではなく、学校に行きたくないから(目的)xxxを不安に思うのだという見方をします。

目的論で考える意義とは

例えば子供が不登校という場合、原因論では母子関係の問題とか、環境の問題、生育上のトラウマなどが考えられるかもしれません。しかし、原因を探ることは現在の問題にはなるけれども解決には結びつかない場合もあります。過去は変えられないからです。目的論では例えば、親の愛情を独占したいから、教師から体罰を受けたことに復讐したい、同級生からいじめにあっていることに気づいて欲しい・・・等の目的があり、その目的に従って現在の問題行動を起こしていると考えます。未来の目的は変えられるので、行動も変えられるのです。目的論は責任転換を許しません。現在かかえている自分の問題は過去のトラウマや他人のせいではなく、何らかの目的をかなえるために自分が選んだ結果なのだと気が付き、その目的を考え直すことで解決に向かうことが出来るというのです。そう考えると、何かに対する怒りが治まらなかった自分を変えていくことが出来ます。

怒りの目的

アドラー心理学では感情が私たちを支配しているのではなく、私たちが感情を支配している、人がある目的のために感情を使って何かを成し遂げると考えます。このことを示す例として、子供が宿題に取り掛からないので怒っているお母さんがいて、そこへ電話が鳴り、夫の母親(義母)から電話が掛かってくると、お母さんは電話口で何事もなかったかのように、にこやかに対応します。そして電話が終わると宿題をやらせようとまた怒号を飛ばします。この場合、子供に対して宿題をやらせるという目的のために怒りが使われるのです。このように怒りには主に次のような目的があります。

  1. 支配~相手を自分の思い通りに動かしたいとき
  2. 主導権争い~交渉などで相手より優位に立ちたいとき
  3. 権利擁護~誰かに自分の権利、立場を奪われそうなとき
  4. 正義感の発揮~正しい(と自分が思っている)ことを教えてやりたいとき

怒りは二次感情

このように目的を達成するために発露する怒りはその発生、頻度や度合い等は他の感情に大きく左右されます。怒りは他の感情に大きく左右される二次感情といわれています。このもとになる一次感情は、落胆、心配、悲しみ、寂しさ、傷つき等です。に先ほどの宿題をやらせようと怒っていたお母さんの場合は、子供が勉強に遅れてほしくないという心配から来る怒りだったのかもしれません。迷子になった子供がようやく見つかったとき、見つかって嬉しいと思いつつも、子供に怒りを感じてしまうのも心配から出た二次感情だと考えられます。

怒りの感情への対処方法

怒りの感情への対処方法として有効なのは、怒りの元になってしまう本音(一次感情)を見つけて、それを相手に「アイ・メッセージ」で伝えることです。「アイ・メッセージ」とは ”I message" 、つまり相手に何をしろと伝えるのではなく、自分を主語にして自分の気持ちがどうなのかを伝えるコミュニケーション方法です。先ほどの例では、子供に「宿題をしなさい!」というのではなく、「XXちゃん(子供の名前)が宿題をしないと、授業に遅れてしまうのではないかとお母さんは心配なの。」と自分の気持ちを伝えるのです。これはアドラー心理学では、横の関係に基づく援助である「勇気づけ」を行うために効果的なメッセージの伝え方とされています。

アドラー心理学に触れてみるのに役に立つ本の紹介

如何でしょうか?

この目的論や二次感情としての怒りは、アドラー心理学のほんの一部をご紹介しただけで、アドラー心理学には「対人関係論」「主体論」「全体論」「認知論」そして、「共同体感覚」等、幅広く、奥の深い教えが含まれています。まずは、アドラー心理学の入門としてとても入りやすい本を紹介します。アドラー心理学に基づくカウンセラー養成を行っているヒューマン・ギルド社を設立された岩井俊憲氏の著作「マンガでやさしくわかるアドラー心理学」とその続編となる「マンガでやさしくわかるアドラー心理学 人間関係編」です。他の本については、今後また紹介していきたいと思います。

 

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