子供のころには気が付かなかったけど、大人になってどうも生きづらいと感じるようになった人の中に、大人の発達障害と診断される人が増えてきています。どう気づき、どう対応していったら良いのか考えてみましょう。
発達障害って子供の問題?
小学校のころクラスに1~2人、とても静かで友達も作らず授業中にあてられても一言も発しなかった子や、始終じっとしていられず教室の後ろをちょろちょろ動き回っていた子がいませんでしたか? そういう子は発達障害と診断されていたかもしれません。発達障害には自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、知的能力障害等が含まれています。ただ、子供のころは自分でも周りも気づかなかった人が大学生や社会人になってから、友人や家族、会社の同僚とのトラブルが多発しそのため心の苦しみを感じ、それがきっかけで医者を受診し発達障害と診断されるケースが増えてきています。一昔前は子供に対する診断名だと思い込まれていましたが、最近は「大人の発達障害」という言葉が普及したおかげで、周囲も本人も発達障害に対する理解が深まってきつつあるからです。
どんな生きづらさがあるの?
大人になってから判明する発達障害のほとんどは、比較的軽度のものです。軽度の発達障害では知的な遅れがないか、あっても非常に軽いために学校の勉強についていけないということはなく、それがゆえに成長段階では周りの大人に気づかれないことが多いのです。では、大人になってどういう生きづらさを感じることで気が付くのでしょうか?ここでは主に自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:以下 ASD)および注意欠如・多動症(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:以下ADHD)について見ていきます。
自閉スペクトラム症(ASD)の特徴(あくまで気づきの参考にしてください)
●社会的コミュニケーションや対人関係の問題
・通常の会話のやりとりが苦手であったり、ほかの人と感情を共有することが少ない
・相手の表情や身ぶり手ぶりから、気持ちを読み取ることが苦手
・実際に目の前にないものや、架空の事柄を想像したり空想することが難しい
・仲間に対する興味が薄いという特徴がある場合もあります。
●こだわりの問題
・ものを並べたり、たたくといった単調な行動を繰り返すという特徴がある人がいる
・同じ習慣への強いこだわりがあり、少しの変化にも苦痛を感じることがある
・興味の範囲が狭く、特定のものにこだわる
・聴覚、嗅覚、触覚、視覚など、特定の感覚が非常に敏感または鈍感
注意欠如・多動症(ADHD)の特徴(あくまで気づきの参考にしてください)
●不注意(気が散ってしまう)
・仕事などでケアレスミスをする
・忘れもの、なくしものが多い
・約束や期日を守れない、間に合わない
・時間管理が苦手
・仕事や作業を順序立てて行うことが苦手
・片付けるのが苦手
●多動性
・落ち着かない感じ
・貧乏ゆすりなど、目的のない動き
●衝動性(思いついたらすぐ行動してしまう)
・思ったことをすぐに口にしてしまう
・衝動買いをしてしまう
誰にでも発達障害的な特性はある
上記を読んで頂いて気が付かれた方もいると思いますが、発達障害の特性というのは誰でも多少はみられるものだと思います。不用意な発言や場の空気を読まない発言をしてしまったり、忘れものをしたり、会議の時間を忘れて間に合わない、片付けが苦手、落ち着かず貧乏ゆすりをする、思ったことをすぐに口にしてしまうなど、誰でもひとつややたつは思い当たりませんか?そんな欠点は一つもないという完璧な人はいるでしょうか? 誰でもが多少は思い当たる特性のうち専門医の診断で発達障害と認められるのは、このような特性が顕著で日配やトラブルが日常生活に支障をきたすほど高い頻度で起こる場合なのです。まず思い当たったら専門医にきちんと診断をつけてもらう事が大切です。まわりも中途半端な知識で「レッテル貼り」をするのは良くありません。上司と始終意見が衝突し、その上司から「お前は言っていることがおかしいから、病院で診てもらえ。」と言われてクリニックでの診断結果は発達障害ではなく、職場環境とその人の長所短所のミスマッチや上司との感情のもつれ、という問題であると判明したケースもあったようです。
本人の努力や親のしつけとは無関係
今まで本人が「努力不足かもしれない」と悩んだり、その人の親が「育て方が悪かったのかな」と悩みを抱えていた方が発達障害と診断されて、これで生きづらかった原因がはっきりした、と安堵される場合も多いようです。発達障害は本人の努力や親のしつけとは関係なく起こるので、そのように思い悩む必要はないと説明されるからです。
また、偉業を達成した人の中には、ASDやADHDだと言われていた人や逸話から推察される人が多いようです。このように、ASD やADHDは、その人の特性、個性なので自分でその特性を理解し、対処法、生活の工夫に目を向けてうまく活かすことが必要です。そのためには自分で認識することと、周りの人にも理解してもらい手伝ってもらうことが必要です。
生きづらさを解消できるヒントの例
次のような工夫やヒントで生きづらさを解消できる場合があります。
ASDの人へのヒント
- 仕事の指示が理解しにくい~正確で詳細なマニュアルを使って確認する
- 段取りを失敗する~時間を見積もる際に最短コースになりがちだと理解する
- 話が理解しずらい~大事な話をする時は落ち着いた環境で行うように依頼する
- 感情が読めない人へ~周りの人は皮肉や曖昧な言葉を使わずダイレクトに話す
- 衝動的な行動をしてしまう~相談相手を決めておき、困ったときはその人に聞く
ADHDの人へのヒント
- 片づけられない~本人が必要性を感じていないのであればそのままでも良い
- 片づけたいのに出来ない~周囲の人が定期的に整理・見直しをサポートする
- 仕事が溜まっていく~仕事を指示する上司に細かい単位に区切ってもらう
- 没頭しすぎる~タイマーを使って仕事や休憩との切り替えをする
- 必ず遅刻してしまう~スマホ等の乗り換えアプリやタイマーを活用する
如何だったでしょうか?
今までの生きづらさを感じていた人の中で、もしかして大人の発達障害だったのかも?と気づいてそれに応じた対応をすることで少しでも生きづらさが解消されれば良いなと思っています。
下記の本はどういう大人の発達障害の人にとってとても参考になると思います。
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『「大人の波立障害」をうまく生きる、うまく活かす』田中康雄・笠森理恵著
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